【国際経営学部】シドニー・マルディグラパレードの調査報告

2024.04.05

国際経営学部

パレードを準備するカンタス航空のフロート

 国際経営学部、中田久美子先生が2月末~3月上旬に、シドニー・マルディグラパレードの調査に行ってきました。

 マルディグラとは、カトリックの謝肉祭にあたる年中行事が由来で、現在も世界各地で盛大なお祭りが開かれています。私が訪れたシドニーで開催されるマルディグラは、世界中から50万人以上の人が訪れるオーストラリアの主要観光のひとつになっています。このイベントの正式名称は、“Sidney gay and lesbian Mardi gras”といい、多文化国家であるオーストラリアならではの要素として、LGBTQIA+の人たちの文化や多様性を称えるプライドパレードであるという大きな特徴があります。

 日本でも各地でプライドパレードは実施されており、私が初めて東京のプライドパレードを訪れたのは、LGBTカップルのパートナーシップについて研究をはじめたコロナ禍のことでした。代々木公園で行われるこの大イベントにひとりで訪れることに大変緊張したことを今でも覚えています。一歩なかに入ると企業、自治体、NPOなどが出展するブースや飲食店が立ち並び、イベントとして盛り上がっているものの、LGBTQIA+communitiesに今ほど知り合いがおらず、どう過ごしてよいのか、ひとりぼっちでそわそわしながら見て回りました。そんななか、旅行博などでよくみかける海外の政府観光局ブースや、ブライダル関連企業のブースをみつけ、観光地、及び、産業がLGBTQIA+向けのマーケティングを戦略的に行っていることを知りました。戦略的という言葉を用いるととても商業的に聞こえるかもしれませんが、まだ一般化していない市場にマーケティングし、認知させていくという取り組みは並大抵のことではありません。こうした観光地や、企業の取り組みを研究することを決め、昨年度は東京、名古屋、沖縄のプライドパレードを、2024年2-3月にシドニーのプライドパレードの視察に行ってきました。

 シドニーのプライドパレードが日本のものとどう違うと感じたかをひとことで表すとしたら、“まち全体の大熱狂”と言えるのではないかと思います。例えば、東京では代々木公園内とパレードのルートとなる渋谷・原宿・表参道の道路の一車線分が行進用に使用される形で限定的なのですが、シドニーでは交通規制がなされ、車道はパレード用、歩道は観客用に完全に別けられてイベント仕様に変わります。東京では、一部パレードルートに店舗を構える企業のスタッフがパレード実施の際に6色レインボー(世界的に用いられるLGBTのシンボルカラー)の旗を振り、装飾をしている店舗がいくつか確認できる程度ですが、シドニーでは政府機関、大学、企業などあらゆる機関がそれぞれにできる応援を考えて実施しているように映りました。例えば、大学であればプライドマンスには、中庭にジェンダー・セクシャリティに関する研究パネルの展示、メッセージコーナーなどを、個人商店であっても、本屋はショーウィンドーに当たる三面にLGBTQIA+に関する本の展示をし、薬局はパレードを盛り上げるためのグッズコーナーをつくるなど、装飾も何もしていない店を探すことの方が難しいくらいでした。

ニューサウスウェールズ大学中庭 メッセージコーナー

シドニー市内薬局
書店ショーウィンドーに飾られるLGBTQにまつわる絵本コーナー

 また、イベント周辺エリアの宿泊施設はこの時期、価格が高騰するため、私は少し離れた場所でAirbnb(民泊のようなもの)を利用していました。ホテルなどの施設と違い、設備やサービスがフルで付いている訳ではないため、部屋にあるはずのものがないなどちょっとしたトラブルが発生することがあります。私は初日、部屋にドライヤーがなく、他のゲストに声をかけて借りたのですが、滞在中は朝早く出かけて夜遅くに戻る日々で、ほとんどその後にそのゲストに会うことがありませんでしたが、最終日にドライヤーを貸してくれたゲストが私をみて興奮気味に駆け寄ってきました。“I saw you in the parade!”と言われて、そう、パレードに出たのという話をしたら、もうそこから質問責めで、パレードの最中の大歓声を受けている時にも感じましたが、終わった後にもシドニーでマルディグラパレードに出るということは、とても名誉なことであるのだと実感しました。

 私が東京のパレードに行く際には、とにかく緊張したということを先にお伝えしましたが、外国人の私が異国のパレードやその周辺エリアに行くことには全く緊張することもなく、まちとイベントエリアの境界をあまり感じることなく過ごしていた訳です。LGBTQIA+communitiesとその他との境界線をなくす環境づくりが素晴らしく、これぞDEI(diversity ,Equity & Inclusion)の先進国としての動き方だなと思いました。もちろん、プライドパレードのイベントが盛り上がっているからと言って、その地の社会的課題が全て解決している訳ではありません。しかし、産業、地域などが連携して一緒に取り組もうとする姿勢は受容するムードをつくり、こうした姿勢がとても大切であることを学びました。

Sidney Mardi Gras parade2024についての参考記事

Sydney Mardi Gras parade 2024 – in pictures | Australia news | The Guardian

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