【学長メッセージ】加藤学長からのメッセージ[2020年12月]

2020.12.01

学長メッセージ

2020年も最後の月、12月になりました。今年は殆ど1年中、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う話題ばかりが取り上げられる年でした。その年を象徴する「今年の言葉」の候補をとして挙げられる30の話題のうち、実に半数以上をコロナ感染に関する言葉が占めているのも当然と言えば当然と言えるかも知れません。

新型コロナウイルスは世界中に蔓延する疫病として、まさにパンデミックと呼ばれる状態を惹きおこしています。これはただ単に疫病がもたらす災いだけでなく、様々な問題を各地で惹き起し、それが人々の分断や差別を生み出していることを皆さんは知っていますか?レバノンで暮らすシリア難民たちに対する差別行為は、コロナ禍がもたらす最大の悲劇のひとつかも知れません。彼らは貧しい生活と、衛生事情が不十分な生活を余技なくされています。その衛生環境から、新型コロナウイルスに罹患する人々が数多く存在することで知られています。シリア難民の人たちがコロナ感染の源と断言出来るはずもないのに、彼らはレバノンにコロナウイルスを持ち込んだ憎むべき存在として、小さな子どもから大人に至るまで、多くの面で差別されているのは大変大きな問題です。暴力を伴う差別行為に留まらず、殺人事件までに発展する差別の温床となっていることは実に嘆かわしく、差別をする側の人をいくら糾弾しても足りないくらいの忌むべき行動です。

SDGs(Sustainable Development Goals)「持続可能な開発目標」という言葉を皆さんは耳にし、大きな関心を持っておられる事と思います。2015年に国連で開かれたサミットにおいて、世界のリーダーたちで採択された国際社会共通の目標です。17の目標を掲げ、2030年までに達成するとしています。目標の10番目に「人や国の不平等をなくそう」とあります。そもそも平等とは何でしょうか。広辞苑によれば「かたよりや差別がなくすべてのものが一様で等しいこと」とあります。即ち、SDGsで国際社会の共通目標として取り上げられるまでもなく、「差別のない平等な社会の実現」に向け、我々は大いなる関心を持ちつつ差別が行われている現実、差別を助長するあらゆる取り組みを完全消去すべく立ち上がらなければなりません。

世界の共通目標であるSDGsを達成するため、日本の若者たちも積極的に行動する事が求められています。そのためには先ず、世界の出来事に関心を持つ事、世界の出来事について自分ならどう考えるか、自分なら何をする事が出来るのか、常に考えを巡らせる事が大事です。遠い世界で差別に苦しむ人たちを見て、「自分には関係ない」と切り捨てる事は簡単です。でもそれで本当に良いのでしょうか。「自分1人が動いたってなにも変わらない」と言い切ってしまって良いのでしょうか。昔、アメリカでテレビを見ていた時、ひとつのコマーシャルを見て衝撃を受けた事があります。それは確か電話ボックスの破壊を止めるコマーシャルでした。(携帯電話世代のみなさんに電話ボックスと言ってもピンと来ないかも知れませんが、昔は公衆電話というものがあって、誰もが1つの電話を有料で使用する場所があったものです。)そのコマーシャルは、ある人が急病人を運ぶための救急車を呼ぶために電話を使おうとしたら壊れていて使用出来ず、急病人が最悪の事態を迎えるというものでした。そして最後に「次はあなたの番かも知れない」とテロップが流れるところでコマーシャルが終わります。そうなんです。「遠いところの出来事だから」「自分には関係ないから」と関心を持たずに放置しておくと、いつかその災いが自分に降りかかるものなのです。「貧困」「差別」これらは決して遠い国の事ではありません。日本でも起こり得ることなのです。SDGsが目指すところを自分の事として捉え、少しでも前に進むよう、みんなで努力しようではありませんか。コロナに打ち勝ち、差別に打ち勝つ事が、地球に住む地球人として果たさなければならない最低限の責務のひとつだと言ったら言い過ぎでしょうか。

一覧に戻る
ページトップへ