【学長メッセージ】 加藤学長からのメッセージ[2021年2月]

2021.02.01

学長メッセージ

令和3年が明け、三が日のある深夜、FMラジオから流れてくる昔の音楽を聴いていました。今年の行く末をなんとなくボーっと考えていたのをやめて、ラジオに釘付けとなったのは「Waltzing Matilda」(ワルティングマチルダ)という、オーストラリアの古い民謡をアレンジした曲が流れた時。1960年に公開された「渚にて」(On The Beach)という古いアメリカ映画に使われた曲でした。

この映画は1950年代後半に作られた映画ですが、場面の設定は1964年頃。今では近未来を想定した映画はいくらでもありますが当時は稀であり、それも5,6年先の極めて近い未来を予測する衝撃的な映画でした。冷戦状態にあったアメリカとソビエトの両国が始めた核戦争が第三次世界大戦となる、当時の世相ではいかにもあり得る物語の展開が、人々の心に強烈な印象を残したのです。両大国が水爆、原爆を双方で何発も落とし合い、北半球は壊滅、最後に残った南半球のオーストラリアも次第に空気が汚染され、最後はどこからともなく飛んでくる核弾頭付きミサイルで全世界が滅亡する。悲惨な結末を、子供ながら現実の世界になるのではないかと、本当に恐れていたのを良く覚えています。特に人類絶滅を前にして、残された人々全員に配られた劇薬を飲もうとするお年寄りご夫婦の前に広がる空の彼方、黒色のミサイルが忽然と雲間から現れる場面は今でも心に残っています。

三が日の深夜一人で「Waltzing Matilda」を聞いていていると、ふと今の世界が奇妙に「渚にて」の世界と類似しているのではないかとの想いに駆られ、子供時代とは違う恐怖を感じてしまいました。そうです、今のコロナ禍はあらゆる国々が挑んでいる世界中の戦いに他なりません。このまま人類が協力せず、知恵を出し合うこともなくコロナ禍にさらされれば、遠い昔の映画のように間違いなく地球全体が滅んでしまう。コロナとは、それほど恐ろしいウイルスであるということを、今では誰しもが認めているところでしょう。

時代が進み、世界の英知が結集してワクチンが製造され、ウイルスに打ち勝つ希望が見えています。コロナは全世界共通の敵ですから、人類同士で戦うことはありません。「渚にて」の戦争は大国のリーダーたち数人が始めた核戦争であり、その愚かな戦いが世界を破滅に追いやったのです。一部のリーダーの野望によって、滅亡へと追いやられてしまう世界に、人々は身をまかせている他なかったのです。

コロナウイルスは、一人一人が共通の認識をもって防疫に力を尽くせば、必ず乗り越えられる戦争です。マスクの着用、手指の消毒、うがい、ソーシャルディスタンスの確保、これらは誰でもすぐに出来る戦闘態勢です。しかしながら人民たる我々がとるそれらの行動には、自分さえよければ良いという自己保身ではなく、他の人のことを想う「ホスピタリティ」の心がなければ効果は薄いと言わざるを得ません。無駄に時間が過ぎてしまうだけです。人間には知恵があり、心があります。相手の心を読み取り、相手の気持ちに心を寄せる共感力があります。もしかするとコロナは人類絶滅をもたらす危機なのかも知れません。だけど他の人を想い、寄り添う心があれば必ずやコロナ禍に打ち勝つことが出来ます。

人生100年時代を生きる若い人たちに、この地球を守るため心がけて頂きたいことがあります。自分の発する言葉が相手にどのように伝わるのか、みなさんが発する言葉を相手はどのように受け取ったのか,それを考える想像力を高める努力をしてください。コロナ禍では「多人数で集まるな」「会食を控えて」「ハグは禁止」「ソーシャルディスタンスをとれ」と、これまで普通に行っていた人との関わり、親愛の情を示す行為は全て悪とでも言わんばかりです。飛沫感染を防ぐには致し方ないことなのかも知れません。だけどこんな時だからこそ、人には他の人と繋がり、お互いを認め合うこと、励まし合うことが必要なのです。関わりを持てない異常な事態で、相手の心を考えずに発言したり行動したらどうなるでしょう。お互いが傷つき、不信感で一杯の人間関係だけが残ります。自分の発言がどのように相手に受け留められるのか、想像力を働かせてください。それを受けた相手の心模様に寄り添い、共感力を高めてください。人を非難するとしても同じです。あなたの発言、叱責がどのように相手に伝わるかを想像しましょう。相手を糾弾するとき、人差し指で相手を指さしながら叱責する自分の手を良く見てください。人差し指は相手を指していますが、中指、薬指、小指の3本の指は自分に向けられています。相手への糾弾、自分にもその責任があるのではないですか?自分に向けられた3本の指は、あなたにそう語りかけているのかも知れません。

人と人の繋がりが極めて強い意味を持つ今、もっとも求められていることは、あなたの心に余裕を持つことです。余裕がなければ人のことを考える時間はありません。自分のことで精一杯になるからです。どうしたら心に余裕を持つことが出来るのでしょうか。それにも想像力が必要なのです。想像力を、相手だけでなく自分にも向けてみましょう。将来の自分はどうなっているのか、想像することです。「想像することは夢を持つこと」です。自分の将来の”夢”を持つことです。私はこれまでも多くの高校生のみなさんに、「夢をもって大学の門を叩いて欲しい」と言ってきました。「ビジネスの世界で活躍したい」「教員になりたい」「公務員になりたい」、みなさんにはそれぞれ夢があるはずです。その夢を共栄大学のキャンパスで叶えませんか?夢を持って大学にきてください。大学で教職員と、多くの仲間たちとその夢を形にしていきます。そして4年生になったら形になった夢に息を吹き込みましょう。就職活動に成功してなりたかった自分になるという夢を叶えるのです。夢を持つみなさんを励ますため、私の大好きなジョンレノンの言葉を贈ります。コロナ禍でもどんな状況でも、仲間、教職員とともに学ぶ共栄大学でならば、あなたの夢は叶うに違いありません。

「一人で見る夢はただの夢。みんなで見る夢は現実になる」

(A dream you dream alone is only a dream, A dream all together is a reality)By John Lennon、The Beatles.

2021年 2月 1日
共 栄 大 学
学 長 加藤 彰

一覧に戻る
ページトップへ